メルカート(市場)


イタリア人はどこで食材を調達するか?半径一キロ以内には必ずあるメルカート(市場)だ。日本やアメリカのように、スーパーもあるが、スーパーはメルカート(市場)が空いている時間に食材の買い出しに行けない人、あるいはメルカートの閉まっている日曜日に利用する人が多い。

メルカートは、屋内店舗のものもあるが、多くは単体のシャッター付き屋台の連なりで、広場に半常設(それぞれ車輪が付いているため、簡単に移動できる)されている。店舗が開いている時はにぎやかな市場となるが、閉まっている時は、落書きされたアルミのボックス店舗がんでゴミの散らばるうらぶれた広場となる。

メルカートに必ずある店舗は、多い順から、野菜、肉、チーズ、魚、パン、花屋さん。場所によっては、靴、生活用品、調味料、あるいはトマトのみを扱った店舗があるところもある。お肉屋さんとチーズ屋さんが一緒になっているところも多い。

同じような店舗がいくつもあるので、どこで買うべきか最初は迷った。が、慣れてくると、イタリア人マンマの人だかりがあるところが、新鮮で安いことに気が付く。そして、もっと慣れると、お店の人とこんにちは以上の会話をするようになり、そこが行きつけの店舗となり、そこ以外では買えなくなる。イタリア語が片言の私でさえ、今では行く魚屋さんが決まっている。

イタリア人には、必ず「行きつけ」の店がある。それは、メルカートの店舗に限ったことではなく、美容院、パン屋、レストランなど、競合が多いタイプのお店ほど「行きつけ」率が高くなる。よく、「私は、この美容院にティーンエイジャーの時から通っている」と六十近いおじさんが話していたり、「肉はこの店舗で、魚は(魚屋並びの)一番奥の店舗で買うことにしている」などと行きつけのお店を紹介してくれたりする。ローマ在住4年の日本人ママ友は、行きつけのパン屋が徒歩圏内に二軒あるという。彼女はいつも買ったパンの袋を別の大きな袋に入れて、行きつけが二軒あることをそれぞれにばれないようにしているのだとか。「行きつけ」文化のイタリアでは、「行きつけの」お店の人に見つかったら気分を害される!、あるいはもっと率直に「なぜうちに来ないの?!」と言われてしまう!と気をもむのだ。やれやれな話だが、これが今も昔ながらの個人商店がイタリアで生き残っている理由なのだ。

「行きつけ」文化もそれなりに楽しい面もある。たわいもない話をする相手がいつもその場所にいるという安心感もあれば、お得意様として常に"regalo!"(直訳は「プレゼント」)おまけしてくれるのだ。人と人のつながりの強さを感じる。


ちなみに我が家の食材は、週末に私が一人でバスで行く距離にあるメルカート(ここではネギ、大根、里芋、もやしなど、アジア系野菜が手に入る)で一週間分の野菜と魚類を購入し(約40ユーロ)、平日に近くのメルカートかスーパーへミコと行き、その他の食材(パスタ、トマト瓶、チーズ、牛乳、肉類、ワインなど)を入手し(約30ユーロ)、週に一回程度H君の職場のスーパーでアジア食材他嗜好品(豆腐、米、醤油、クッキー、マドレーヌなどおやつ)を買う(約10〜40ユーロ)。

物価を円もしくはドルで考える私たちにとってユーロのイタリアは高い国だが、食費に関しては安めでとても新鮮。現在1ユーロ=170円だが、1ユーロ=100円くらいの感覚で消費活動をしている。

毎週決まって食べるものは、土曜日にヴォンゴレのスパゲッティと焼きたてのパン。日曜日にムール貝の酒蒸し。ちなみにアサリは1キロ12ユーロ、ムール貝は1キロ4ユーロ。