守りたい気持ちが信じる気持ちを上回って

3ヶ月程前、オーストリアで衝撃的な事件が報道された。父親が(現在73歳)が実の娘(同42歳)を幼少のころより性的に虐待し、娘が18歳になってから23年間地下室に監禁し、そこで7人の子供を産ませたという。

毎回、こういう虐待のニュースを見聞きする度に、信じられない!と驚愕し、加害者の父親に激怒する。そして、その後必ず攻撃を受けるのが無邪気にミコと戯れているH君。


「ミコにこんなことしたら、君を刺す!(怒)」

と本気で怒って言う。H君はぽかんとした顔をした後、

『僕がやったことじゃなにのに、ひどいよ!』

とちょっと気分を害しながら、それ以上に、私のあまりに不合理な攻撃が面白いようで笑っていた。しかし私は真剣そのもの。H君を攻めることの不合理性は頭では理解しつつも、同じ「父親」「男性」というだけで罪なのだ。出産後授乳中の女性の感情的思考回路なのだろうか。

もちろん、H君を信用していないわけではない。まだそんなに知らない友達の頃から二人で旅行した相手だ。出会って間も無い頃から人間として信用している。おそらく、彼以上信用できる人間にはもう出会えないだろう。それでも、幼児虐待のニュースがあるたびに、もし、万が一、億が一、ということを考えてしまう。もし、彼も知らなかったようなコントロール不可能な、幼児あるいはミコ個人への性的欲望や支配欲がでてきたらなんて思ってしまう。

馬鹿げた想像だと理性で分かった上で、たまに感情的に「君を刺す!」攻撃をする。これに対してH君はミコの方を向いて、「さあミコ、地下室へ行こうか!」で応戦してくる。彼はなかなか寛大でユーモアに溢れている。