コト出産記 その1

2010年10月23日土曜日、第二子コト出産。記憶の新しいうちに出産の備忘録を書いておこう。

予定日一日前の金曜日の夜。
10分間隔で規則的な陣痛がきていることに気付く。あ、きたかな、と思ったものの、痛みがそれまでの不定期の陣痛(ミコのときと同じく、妊娠6ヶ月頃より不定期の陣痛あり、36週あたりから一日10〜20回)と変わらなかったのでしばらく様子をみることにする。先生からは、陣痛が10分おきになったら携帯に電話をするようにと言われていたが、まだな気がして電話はしないでおいた。

浅い眠りながら眠りにつく。翌朝起きると、陣痛が止まっている!ミコのときの経験では、規則的な陣痛が始まって2日後に出産となったが、その間陣痛が止まるということは無かった。不安になってネットで検索してみると、本陣痛が始まっても途中で止まることは珍しくないとのこと。6週間手伝いに来てくれている母もそうだったと言っている。安心して、メルカート(市場)へ買い出しにいくことにする。

アパートの3階から階段で地上まで降りて、バス停まで3分歩き、バスに揺られて20分。品揃えのよい大きなメルカートへ皆でいく。目的は、私が体を動かしてなるべく出産を早めるためと、母にアジア中東系の野菜が買える野菜屋さんを教えるため。里芋、サツマイモ、オクラ、ショウガなど、他のメルカートでは買えない野菜を中心に、二輪つきの買い物かごいっぱい買いこむ。その後、メルカート近くのH君お気に入りのこじゃれたレストランで昼食。「これが出産前の最後の外食かもね。もう、しばらく外でご飯食べられなくなるね。」なんて話をしながら、シーフードのアンティパスト、グリルパスタ、ウニのリゾットを食する。

13時半、レストランに入ったころから陣痛復活。試しにH君の腕時計を見ながら、テーブルに敷かれた紙の上に陣痛の時刻を書き留めてみると、8分間隔できている。これまで感じてきた陣痛よりも多少強い。これかな?、でも、まだ大丈夫だろうと、帰りもバスに揺られて、アパートの階段3階を上って家に戻る。まだ時間はあるだろうが、そう遠くないとの判断で、H君はカーシェアリングの車を取りにいく。私と母は小粒ベリーのケーキと紅茶をいただきながらのんびり過ごす。陣痛は、徐々に、でも確実に強さを増していく。17時、とうとう先生に電話をして2時間後に病院へ行くことを告げる。先生もその時間に病院に来るという。

18時、H君、韓国食材店で食材(お米、キムチ、乾麺など)買いだし後帰宅。その頃にはこれはきていると確信する程度の強さになっていたので、まとめておいた荷物を車に乗せて皆で病院へ向かう。6-8分間隔でくる陣痛の度に、大きく呼吸を繰り返しながら、座席上で腕を腰にあてて腰をくるくる回した。こうすると、痛みが多少そらされる。町中は土曜日の夜ということで渋滞。一時間近くかかって、病院へたどり着く。

19時頃、病院到着。先生はすでに廊下で待っていて、すぐに診察。入院書類一式(数週間前に行った血液・尿・超音波・心電図検査、立会人(H君)のサルモネラ菌検査結果)を看護士さんに手渡す。触診した先生の一言目は、「わおー、5センチ開いてるわ!あなたは私のベストな患者よ!」

個室に案内され、手術着に着替えて、胎児の心電図チェックと浣腸。モニターで陣痛の波と胎児の心音が呼応していることを確認。点滴で抗生物質注入。数週間前の検査で、産道にバクテリアがいる可能性ありとでたためだ。500mlすべて入ると、液体は砂糖水に切り替えられる。胎児の心音が早めなので、落ち着かせてあげるためにとのこと。砂糖水の効果はすぐに数値に表れる。「あ、この子、落ち着いてハッピーにしているわ」と先生が言う。

一通りの検査が終わった後、先生と看護士は個室をあとにする。開放された私は、陣痛と陣痛の合間に点滴ホルダーをガラガラ押しながら、ミコと廊下をお散歩。陣痛の波がくると、「ミイちゃんちょっと待って。」と言って止まって、呼吸を整えながら腰回し。ミコは、いつもと違う雰囲気なのを察知してかその間大人しくじっと見ている。

20時頃、個室に戻り、先生が再び触診すると、子宮口は8センチ開いているとのこと。ミコの時は、5センチ以降より、数分置きにお腹全体に電気ショックが走り、腰の下部に激痛が襲ってきていた。が、今回8センチの時点で、電気ショックと腰激痛がまだない。さらに陣痛の間隔も長い。え?もう8センチ?本当?看護士さんは陣痛の度に上手にお腹を抑えてくれて、「自然に生むなんて偉いわ!(イタリアは無痛分娩が主流)」と褒めてくれる。先生は、あと30分くらい待って破水しなければ人工的に破水させると言う。羊水の中に含まれる成分が陣痛を促進させる働きをするからだ。

20時半頃、ミコの時と同様、先生は突起のある棒(アイスクリームの棒のようなもの)でちょんとつついて破水させた。経験から、その直後に激痛が襲ってくることを予期したものの、その後少なくとも10分程度は陣痛の波は変わらず。あれ、おかしいな?と思う。先生も看護士さんも、「随分陣痛の間隔が長いわね。長いけれど、陣痛が来ている時の時間も長いのね。」と私が思っていることを口にしている。

激痛は突然やってきた。腰痛は皆無だったものの、お腹全体への電気ショックに、うわわわわと気を失いそうになる。激痛レベルはマックスになったものの、陣痛間隔は相変わらず長い。激痛期に入って20分もしないうちに、看護士さんが「あら、やっとマークが見えたわ!」と言ったかと思うと、先生が「イキみたい?(プッシュしたい)?」と聞いてくる。ミコのときもそうだったが、イキみたいという感覚は無い。が、積極的にイキみたくないという感覚もなかったし、この痛みから少しでも開放されるプロセスへ移行したかったので「はい!」と答える。

その時きていた陣痛の波をやり過ごした後、ベッドごと分娩室へ運ばれる。廊下で遊んでいたミコにミイちゃん〜!と手を振ると、H君は「え、もう移動するの?マミー笑ってるよ。余裕だね〜」なんて言っている。余裕じゃないけれど、愛娘に心配させたくないでしょう!これだから産まない人は!なんて思う。

21時過ぎ。分娩台へ移動。先生は、「いい、陣痛が始まったら息を思いっきり吸うの!その息を体内にとどめたまま、両サイドのハンドルをオールをこぐように思いっきり手前に引っ張ってプッシュするのよ!うんちするみたいに押し出すの!大切なのは、息を吐き出さずに体内にとどめたままプッシュすること!」と分かりやすくイキみ方を説明してくれる。そして、陣痛がくると、はい吸って!と一緒に息を吸うマネをして、はいプッシュして!、はいストップ!息を整えてヒーフーヒーフー!と誘導してくれる。

ここにきて、さっきまでの長い陣痛の間隔がうそのように、次から次へと電気ショックが襲ってくる。え、このイキむステージってこんなに苦しかった?ミコの時はもうちょっと間隔が開いていた気がするんだけれど。。もう間隔を置かずに襲ってくる陣痛に気を失いそうになりながら、ひたすら先生のマネをくり返す。早くこの激痛から逃れたい!そのためには出さなくては!

先生のジェスチャーの通りに、思いっきり息を吸って、口の中に綴じ込め、ハンドルを思いっきり引き、うーんとイキむこと3、4回。ぶちっと会陰が切れる鋭い痛みとともにぬるっとしたものが外にでてきた。え、もう出てきたの?と思うと同時に、やっと楽になれると安堵する。

とはいうものの、出産はここで終わりではない。